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第4話 疑いの目①

last update Date de publication: 2025-05-22 18:22:20

 さくらは屋敷へ戻るといつも通り、掃除を始める。

 学校から帰ってくる時間は大抵掃除の時間とかぶっていたので、他のメイドたちと一緒に掃除に勤しむことが多かった。

 各々の持ち場で掃除に精を出していると、メイドたちの視線が一斉にある場所へと注がれた。

 彼女たちの視線の先にいたのは聖だ。もちろんさくらも彼のことを視線で追っていた。

 長い廊下の向こうから歩いてくる彼の手には、分厚い本がある。

 たまにページをめくり、何かつぶやきながら歩くさまは知的な感じが漂い、彼の魅力をさらに引き立てているようだった。

 メイドたちがうっとりと聖に見惚れていると、突然さくらの脳裏に映像が入ってきた。

 本を読んでいた聖が廊下で足を滑らし転んでしまう。

 さらにその振動により、側にあった柱時計が倒れてきて腕を怪我してしまうという映像だった。

 まさにこれから起こることではないのか。

 そう思ったさくらは急いでその映像にあった廊下の場所を探しに向かった。

 先ほど映像で見た場所を発見したさくらは辺りを見渡す。

 足元の床が少しだけ濡れている個所がある、きっとここで足を滑らせるのだ。

 さくらは急いで水を吹くと、側にある柱時計を見上げた。

 滑らなければ倒れてこないはずだから、とりあえずこれでいい。

 さくらは物陰に身を潜め、聖を待った。

 しばらくすると、向こうの角から聖が姿を現した。

 本に夢中で前を見ていない、あのまま濡れた場所を踏んだら転んでしまうだろう。

 さくらが息を呑み見守る中、聖が無事に問題の個所を通り抜けた。

 ほっと胸を撫で下ろした、そのとき――

「おまえ、こんなところで何してるんだ?」

 後ろから声をかけられ振り返ると、そこには誠一が腕組みをしてこちらをじっと睨んでいる。

「せ、誠一様! えーと……ちょっとここら辺が汚れているなあ、と」

 なんでもない床を指差し、だんだん尻すぼみになっていくさくらを、いかにも怪しんだ目で誠一は見つめてくる。

「なんか怪しいんだよな……おまえの言動って」

「そ、そうですか?」

 とぼけて顔を背けるが、誠一にはまったく効果はなさそうだ。

 ここをどう切り抜けるか、さくらが頭をフル回転させていると、

「まだここにいたんですか?」

 さくらと誠一の前に旭が姿を現した。

「さくらさん、ここを掃除しろとはいいましたが、いつまでかかっているんですか? やることは他にもあるんですから、困ります。戻ってください」

 向こうへ行けというように、旭はさくらを見つめながら廊下の先を指差した。

 旭に指示された覚えはなかったが、今はとにかく一刻も早くこの場を離れたかったさくらは旭に従うことにする。

「はい、申し訳ありません。誠一様、失礼いたします」

 二人に一礼し、さくらは足早にその場を離れていった。

 さくらが去ったあと、旭を横目で見る誠一に対して、彼はにこやかな微笑みを向ける。

「さくらに何か用事でしたでしょうか?」

「いや……」

 それだけ言うと、誠一は旭に背を向けその場から離れていく。

「……あいつはどうも苦手だ」

 誠一は誰にも聞こえない声でつぶやいた。

 誠一の後ろ姿を見送った旭は、ほっと胸を撫でおろし、さくらが去っていった方を見つめ微笑んだ。

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Commentaires (1)
goodnovel comment avatar
憮然野郎
旭さん、優しい人なんですね...️...
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